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January 11, 2007

ブレーメンのおんがくたい~高齢化社会のテキスト

 グリム童話のこのお話は一見単純な勧善懲悪にみえるけど、おとなになって読んでみるといったいどこが勧善なんだ!という気分になる。というかロバ、イヌ、ネコ、ニワトリの4匹は他人を脅かし勝手に家に侵入しのっとったわけだから、現代の日本の法律に照らし合わせると少なくとも不法侵入罪、恐喝罪、横領罪の3つは適用される。これはヘンゼルとグレーテル同様悪い人には何やってもいいという考えが見え隠れして愉快じゃない。

 それからもうひとつ。人生80年として折り返し地点を曲がった世代になると、また別の寂寥感が滲んでみえる。おそらく60代、70代と年を重ねるに従って感じ方も変わってくるんじゃないだろうか。この本を幼稚園で読み聞かせした後、老人ホームで読み聞かせして反応の違いを探ってみるのも面白いかもしれない。

 日本は経済社会だから何といっても金稼ぐやつが強い。そんなに稼げなくても働き手としての価値があるうちはなんとか生き長らえていけるが、働けないものには現実は厳しい。4匹の動物達もそれぞれ年を取って働けなくなったおじいちゃん、おばあちゃんってわけだ。

 役に立たなくなったものは処分される運命。ただ殺されるのを待っているんだったら何処かへ逃げようとするおじいちゃん、おばあちゃん達の勇気と決断力には頭がさがる。「息子が言うことを聞いてくれない。嫁の仕打ちが冷たい」と愚痴をこぼすしてばかりいる年寄りにじゃなく、自分の生活を築いていける年寄りになりたいと思う。ただ、その時になってみないとわからない事だろうけど。

 とても不思議なのはタイトルが『ブレーメンのおんがくたい』なのに動物達はブレーメンまで到達していなく、音楽隊にも入らない。ブレーメンに行って音楽隊に入ろうという目標はどこからきたんだろうか?もしかしたらおじいちゃん達が六本木へ行ってIT企業を立ち上げようというくらい突拍子もない思いつきなのかもしれない。突拍子もない夢にしかすがれない現実はある意味悲しいけど、突拍子もない夢を原動力にしてでも動き出すことは素晴らしい。

 今回紹介する絵本は瀬田貞二さんのべらんめえ調の日本語が渋い味出している。

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Comments

自分好み、これ子どもたちに読んであげたら楽しいかもしれない、くらいしか読み込まないワタシ、ぴぐもんさんの書評は、とても楽しく読ませてもらっています。
瀬田貞二さんの訳の本を図書館で読んでみました。雨が3日も降り続くような、などの表現がいいですね。
大人になってから読むのと子どもの頃の印象って、ずいぶん違うものですよね。不法侵入罪、恐喝罪、横領罪、確かに。今まで考えもしなかったです。それに、彼らはブレーメンまで行かないわけで。なるほど、と思いました。
今ごろですが、サンタクロークは3Kっていうのも、へぇ~って思っちゃいました。

Posted by: ふう | January 13, 2007 at 11:37 AM

ふうさん、こんにちわ
 そうですねー、子どもならあまり物語の意味なんか深く考えないで、ただ単に楽しいとか面白いとか感じればいいんじゃないでしょうか。なにかの本で子どもに小さいうちから国語の授業みたいに『作者は何がいいたいのか?』なんてこと強制的に考えさせるのは逆効果だと書いてありました。単純に楽しむことが肝心で、意味なんて後でわかればそれでいいそうです。
 『ブレーメンのおんがくたい』は結構楽しそうに編集してある絵本が多いのですが、この瀬田貞二番は老いたものの悲しさややるせなさが不思議と滲み出ていてこんなレビューを思わず書いてしまいました。

Posted by: ぴぐもん | January 14, 2007 at 03:20 PM

ぴぐもんさん、こんばんは。
老いたものの悲しさ、やるせなさ・・・
自分が若かった頃は、マイナスイメージだったことです。
でも、だんだん経験を重ねていくと、そういうやるせなさに味を感じたりするんですよ。なぜか。
そして、「ブレーメンに行こう」という とっぴょうしもない思いつきこそ、すばらしい。
たとえ かなわなくても そういう想像力を持った仲間達がいうることってステキだと思いませんか?
わたしも、日々 何かを思いつくうちが花だと思っています。

Posted by: noel | January 15, 2007 at 09:50 PM

noelさん、こんばんわ
 「思いつき」も「想像力」といってしまうと違ったイメージで聞こえてきますね。誰かが言ってましたが、子どもの未来を救うのは想像と創造だと。
 実践できない「思いつき」を語り合ってほら話に花を咲かせる老後もまた、いいかもしれません。私自身将来、思いつきだけは誰にも負けないばあさんになりそうな気がします。

Posted by: ぴぐもん | January 17, 2007 at 09:13 PM

『ブレーメンの音楽隊』こちらでご紹介の絵本は読んだことがないのですが、子どものころからグリムは好きで、ずっと変な話だと思っていました。
音楽隊どころか、ブレーメンにも着かなかったのに「ブレーメンの音楽隊」を名乗っているのが不思議で不思議で。タイトルは有名ですが、音楽隊にならなかったという部分はあまり有名ではなさそうですよね。子どもが劇をやったときに、「その後音楽隊になりました」と締めくくっていたので、「えっ! 違うじゃん!」と突っ込みたくなったことがあります。

プロットとしては弱者が強者を倒すというものなので、そういう点ではすっと入っていくものなのかもしれませんが、この弱者が年老いた動物という点や音楽隊という決定は異色な感じがします。他の類例は思いつきません。年老いてから、実現するかしないかはさておき、ゆめを持つというのはいいかもしれませんね。叶う、叶わないにしても。
ぴぐもんさんの、六本木へ行ってIT企業を立ち上げようという比喩が面白かったです♪

Posted by: kmy | January 28, 2007 at 11:34 AM

kmyさん、こんばんわ
 
 そうですねえ、もしも子どもがこの話を読んだら素直に泥棒を退治したあと音楽隊になったと考えてもおかしくないかもしれませんね。
 
 子どもを含めて若いうちは「年をとる」という感覚がわからないと思うんですよ。その感覚が少しわかるようになった私位の年代になるといろいろひねくれて物事を捉えてしまうみたいです。

 この動物達、雄鶏のヴォーカルは別としてネズミを追っかけていただけのネコや荷車を引いてばかりいたロバに楽器を弾いてる余裕なんかなかったんじゃないか?なんて思ってしまうんですよ。それでこんな意地悪いレビューになっちゃったんですね。

 夢を持つのは勿論いいことなんだけど、できれば叶わない夢じゃなくて現実をみつめて叶えれれる夢を実現していきたいですね。

Posted by: ぴぐもん | January 28, 2007 at 10:02 PM

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