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October 15, 2006

おぼえていろよ おおきな木~見よ!植物の生命力

 「100万回生きたネコ」でおなじみの佐野洋子さんの絵本です。折りしもシェル・シルヴァスタインの「おおきな木」のレビューを書いたばかりのところ、グッドタイミングにこの本と出合ってしまいました。佐野さんがシルヴァスタインの本を意識して書いたのかどうかわかりませんが、(私には意識して書いてるように思えるんですが)2冊を単純に比べてみて、こちらのほうが後味のいい終わり方をしていて「私、この本好き!」と素直に思えました。

 あるところに1本のおおきな木がありました。木のすぐ近くの小さな家にひとりのおじいさんが住んでいました。とても立派なおおきな木なのですが、おじいさんは木のことを疎ましく思っています。朝になると小鳥が集まってきてうるさい、木陰でお茶を飲んでると小鳥のふんが落ちてくる、秋になると枯葉がうっとおしいだの文句ばかり言ってるんです。

 ところが、このおじいさんは他の誰よりも木の恩恵を受けているんです。朝は鳥の声で目が醒める、木の幹にロープを結んで洗濯物を干す、秋に実ったリンゴの実を近所の子どもたちが取りにくるのを追い払い独り占めする、枯葉を集めて焚き火をしながら焼き芋を焼く。こんなに木の恩恵を受けながら感謝するでもなく身勝手に文句ばかり・・・とても偏屈なおじいさんなんですが、なぜか憎めずかわいいんですよ。

 ある冬の日、雪に滑って木にぶつかり痛い思いをしたおじいさん、とうとう木を切り倒してしまいます。ところが、いざ木のない生活をしてみると、花が咲かないので春になったのがわからなかった。小鳥が集まってこないので朝が来たのがわからなかった。洗濯紐をかけるところがない。お茶を飲むにも木陰がない。焼き芋を焼きたくても枯葉がない。雪が積もると目印になる木がないので自分の家が見つからない。

 仲のいい友達でも、好き合って一緒になった夫婦でも一緒にいるのがあたりまえのようになってしまうと、ありがたみがわからなくなって逆に嫌な事のほうが鼻についたりするものです。いなくなって初めてその価値がわかったりするんです。

 この話のいいところは、ここで終わらないのです。落胆したおじいさん、ある日切り株の端っこから若くて細い芽が生えているのを見つけます。おじいさんは水をあげ、その後木を大切にするのでした。

 私はアロマの勉強をするようになって木とは限らず植物の生命力に大きく感服させられています。植物は自分で話すことも動くこともできません。できないけれど、その分したたかさがあるんですよ。この木も根っこに残った命の種から小さな生命の芽を伸ばす。自分を痛めたおじいさんを恨むでもなく、前向きに自分の命を伸ばす。希望がわいてきて嬉しくなってくる絵本です。

 

 

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Comments

私のブログにおいでいただきまして、ありがとうございました。ピグモンさんもこの絵本を紹介されていたのですね。同じ絵本を好きな方がいらして嬉しいです。
前半のおもしろいところも好きですが、大事なことはお話の最後ですよね。終わり方がステキです。木には本当に生命力がありますね。

Posted by: ふう | October 19, 2006 at 11:01 PM

そらさん
 ぴぐもんの書斎へようこそ!
ほんとうに終わり方が素敵な絵本ですよね。木に限らず大地の力、自然の力の一端がうかがえたようで感嘆してしまいます。
 是非また遊びに来てください。

Posted by: ぴぐもん | October 20, 2006 at 01:22 PM

ぴぐもんさん、こんばんは。
ブログにコメントいただきありがとうございました。

>いなくなって初めてその価値がわかったりする
って、本当にそうですよね。
いろいろ身につまされる言葉デス。

ピグモンさんの記事、いろいろゆっくり読ませていただきたいです。
ハイアイアイ書房にもまた遊びに来てください!

Posted by: miyaco | October 22, 2006 at 12:18 AM

miyacoさん、コメントとTBありがうございました。
 実はmiyacoさんのブログは検索で知ったんですが、先日「オトナノトモ」にいらしていたのを発見してしまいました。前々からどこかですれ違っていたのかも知れませんね。
 ハイアイアイ書房もとっても素敵なお店ですね。また今度遊びにいきます。
 

Posted by: ぴぐもん | October 22, 2006 at 02:10 PM

こんばんは。私もこの絵本好きで、いつか記事にしようと思っている1冊です。
佐野洋子さんの作品には、すごく自分勝手だったり偏屈だったりで扱いにくそうなのになぜか憎めない、というキャラクターがよく登場しますが、味がありますよね〜。また、そういう人間が愛される余地があるからこそ、世の中捨てたもんじゃない、悪くないよなって思ったりもします。佐野さん自身も歯に衣着せぬ物言いで飄々とされていますが、すごく魅力的な方ですよね。同じ女性として憧れてます。

Posted by: えほんうるふ | October 28, 2006 at 09:32 PM

えほんうるふさん、こんばんわ
 「100万回生きたネコ」なんかも身勝手だけど憎めない奴ですよね。確かに。絵の魅力っていうのもあるかもしれませんが、やっぱり作者のキャラクターに対する愛情でしょうかね。
 
 この頃、いじめを苦に自殺するような事件が相次いでますが、自分の子ども達はこの木みたいに、どんなに痛めつけられても誰かを恨むでもなく責めるでもなく、したたかに自分の人生を全うしていってほしいと切に願いました。

Posted by: ぴぐもん | October 28, 2006 at 09:46 PM

ふうさん
 ごめんなさい。お名前間違えて表記してしまいました。しかもずいぶん経ってから気づくなんて・・・こりずにまた遊びにきてください。

Posted by: ぴぐもん | October 28, 2006 at 11:11 PM

ぴぐもんさん、やっと 読みました。
ぴぐもんさんのレビューの内容通りだったですね。
そして、この偏屈おじいさんのこと。
この おじいさんは木を切り倒してはじめて気がついたようだけど、「おぼえていろよ」っといって、木をけっていた時から、本当は、この木が大好きだったんじゃないかな~って思います。
佐野洋子さんといえば、谷川俊太郎さんの奥さんですが、「谷川俊太郎」を講演に呼ぶ時は、必ず佐野洋子さん込みで 呼ばなきゃならない と関係者が言っておられました。
そういう わがままが通るのも、彼女の人柄なんでしょうね。
彼女の絵本は、風変わりで、哲学的で、癖になります。 

Posted by: noel | November 05, 2006 at 09:45 PM

noelさん、こんばんわ
 佐野洋子さんが谷川俊太郎さんの奥さんだったなんて知りませんでした。

 実は佐野洋子さんの本って「100万回生きたネコ」しか読んでいなくて、(あれはとってもいい絵本ですよね)谷川俊太郎さんはどちらかというと敬遠していた絵本作家でした。これを機に少しお二人の本を手にしてみようと思います。

Posted by: ぴぐもん | November 06, 2006 at 06:57 PM

佐野洋子さんの本って、「100万回生きたネコ」にしろ「おじさんのかさ」にしろ、主人公がちょっと屈折していて、そこに、作者の思いが込められているような気がするんですが、ぴぐもんさんは、きっと はまると思うなぁ。。。ナンテ

Posted by: noel | November 06, 2006 at 09:55 PM

そうですか。もう既に私の嗜好をわかってらっしゃる。スゴイ!Amazonのコンピューターよりも当たっているかも・・・

Posted by: ぴぐもん | November 07, 2006 at 07:54 PM

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Posted by: Sonja | September 06, 2015 at 08:29 AM

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