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March 22, 2006

かいじゅうたちのいるところ~食べちゃいたいくらいの愛情

 最初よんだ時は、それほどいい印象は受けませんでした。話はシンプルだし、何より絵が可愛くない。ところがヤマハで出してるビデオ・シリーズ「世界お話絵本箱」を見て受け止め方が変わりました。このシリーズは絵本本来の良さを損なわないため、アニメーションの動きをできるだけ抑えて、あたかも絵本を読んでもらってるように構成されています。それでも、「かい じゅうたちのいるところ」は他の作品に比べて動きが多いほうでした。マックスのやんちゃな動き、そしてかいじゅうたちのおどけた動き。

 オオカミの着ぐるみを着て暴れまわるマックスは、お仕置きに夕食抜きで部屋に閉じ込められてしまいます。すると部屋の中に木がにょきにゅき生えてきてジャングルになってしまいいます。そして、マックスはボートに乗って海へこぎ出でます。着いた所はかいじゅうたちのいる島。マックスはかいじゅうたちの王様になって威張って暮らします。でもそのうち、寂しくなって誰かさんのところは帰りたくなってしまいます・・・

 誰かさんというのはもちろんおかあさん。幼児期の子どもは常に王様。威張って甘えてなんでもかんでもおかあさんに頼って生きています。それでも時にはピシャリと叱られることもあります。しつけの必要もあるし、おかあさんだってたまには王様のわがままに付き合いきれなくもなるんですよ。

 そんな時、子どもの願望で何でも言うことを聞いてくれる家来がいたらいいな・・・なんて考えます。しかもその家来が強くてたくましかったら尚更いい。自由気ままに王様とし君臨するマックスですが、そのうち誰かさんのところへ帰りたくなる。

 この絵本にはおかあさんの姿は出てきません。それなのに、最初にマックスが叱られるシーンにも、お部屋においてあるスープのシーンにも、なにより島にいるマックスが恋しくなるシーンで、はっきりとおかあさんの存在が伺えます。いかにマックスがおかあさんと繋がってるのかがわかります。
 
 それから、この絵本にはもうひとつ「額縁効果」と呼ばれる技法が使われてます。最初のページの絵は小さく、ぺーじをめくるたびにえ見開きにおける絵の割り合いが増えてきて、つまり大きくなっていって、かいじゅうおどりのシーンでは見開き全体が絵になっています。現実世界におけるマックスは無意識に自分の存在の小ささに気づいているのかもしれません。空想世界に深く深く入るにつれて自分を偉大な存在にすることができるのです。

 実はこの「額縁効果」というのはある学生さんのブログで知りました。児童文学を専攻されてる方らしく読み応えのある文章を書かれてましたが、ブログを閉じられてしまったようで残念です。

 着ぐるみを着てかいじゅうになったマックスはおかあさんに「おまえを食べてやる」といいます。別れ際にかいじゅうたちがマックスに「俺たちはおまえを食べちゃいたいくらいすきなんだ」と言って引き止めます。それこそがおかあさんがマックスにいつも言ってることばなんですね。

 

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Comments

 セルマ・G・レインズ『センダックの世界』(岩波書店、1982.1)という大型本を図書館で見つけました。
 創作の裏話がいっぱいですが、大きなセンダックの絵をみるだけで堪能できます。
 この本の話を、ぴぐもんさんの記事のコメントに書こう書こうと思いつつ、うまく消化できずに感想が述べられないでいました。
 今は絶版で、洋書も満足のいくものが手に入れにくいようですが、機会があったら是非ご覧になってください。
 『センダックの世界』の続編に相当するのが、Tony Kushner 『The Art of Maurice Sendak: 1980 To the Present』らしいのですが、これにも興味を持っています。

Posted by: Iwademo | May 24, 2006 at 12:47 AM

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