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January 03, 2006

夕あかりの国~黄昏ムード漂う絵本

 「長靴下のピッピ」の作者、アストリッド・リンドグレーンの作品です。けれどピッピにある爽快感はこの本にはありません。

 病気で一生歩く事が出来なくなってしまった少年のところへ夕あかりの国から迎えが来ます。夕あかりの国は別名「ないないの国」ともいうそうです。そういうとピーター・パンのいるあの島を連想しますが、迎えにきたのは子どもと同じ位の背丈しかない小さなおじさん。

 空を飛んで夕あかりの国へ行った少年は電車やバスの運転をさせてもらったり、王様にお目通りしたり、女の子とダンスを踊ったり楽しい時間を過ごします。夕あかりの国ではなんでもできて、なんとでもなるのです。ただし、そこに行けるのは選ばれた人だけなんです。

 うわべだけ文章を追っていると、とても楽しそうなんですが、この本を読んでいると素直に楽しめる・・・というわけには行きません。少年が楽しい描写をすればするほど、せつない気分になってきます。タイトルから連想されるとおり、黄昏時のはかなげなムードが絵と文、双方から漂っています。

 本を読みふけったり、漫画やゲームに没頭したり、頭の中だけで想像したりする事は一種の現実逃避です。だけど現実というのは必ずしも思うようには運びません。むしろ思ったように行かない事のほうが多いのです。フィクション=虚構に触れる事によって上手くいかない現実と折り合いをつけるのだと思います。本を読まない子、とりわけフィクションを読まない子は、いざという時の心の対応にとても苦労するのだそうです。

 この本の少年も夕あかりの国に行く事によって目の前に突きつけられた厳しい現実となんとか向き合おうとしていうようです。ただ、楽しい行いをすればするほど漂うせつなさ。彼の悲しみはそうそう簡単にぬぐい去れるものじゃないようです。

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