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September 11, 2005

怪盗紳士~巨匠が盗んだプロット

 ポアロにホームズ、金田一くんに明智くん、ミステリーの定番は一通りかじっているのですが、何故かルパンには縁がなくて数年前に堀口大學の「強盗紳士」の中の「ルパン逮捕される」を読んだきりでした。堀口大學は19世紀の詩の翻訳は右に出るものはないけれど、やはり文章が古めかしくて読みずらかったです。この南洋一郎訳は子供向けに編集されているらしく、気楽に面白く読めました。

 南洋一郎という名前は、かつて「小説ジュニア」に青春小説が載っていたのを記憶していたのですが、明治26年生まれと知って驚きました。小説を読む限りそんなに年配の作家とは思えませんでした。しかも昭和55年に亡くなっていらっしゃる。つまり私が読んだ「小説ジュニア」の作品は遺作に近い作品だったわけです。

 さて、この本の第2話「サタン男爵の盗難事件」を読んで、ぶったまげました。江戸川乱歩の少年探偵シリーズに、そっくりな、というか瓜二つの話があったからです。

 〔怪盗ルパン:怪人二十面相〕から予告状をもらった依頼人が、たまたま近くに休暇で来ていた〔ガニマール警部:明智小五郎〕に事件を依頼する。しかも両探偵とも釣りをしていたところで依頼を受ける。予告された夜、〔ガニマール警部:明智小五郎〕は部下を連れてやって来る。〔名警部:命探偵〕は部下に宝を見張らせて、自分は居眠りをする始末。不安がる依頼人もつられて寝てしまう。朝起きてみると、部下は麻酔で眠らされて、絵画や宝石はごっそり盗まれていた。しかも〔名警部:名探偵〕だと思っていた人物は実は〔ルパンの部下:二十面相本人〕だった。

 ここまでくると、もう盗作としか言いようがない。江戸川乱歩といえば日本を代表するミステリーの巨匠。そんな人物がこんなにあからさまにプロットを盗んで、公然と出版されている。なんか、腑に落ちない。

 とはいえ、ルブランの側には何の責任もありません。ルパンは魅力的な人物でストーリーも面白かったのは確かです。特にルパンの子ども時代のエピソードを書いた「ぼくの少年時代」は、ますますルパンに親近感が沸いてきます。



       


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Comments

 私は乱歩には詳しくないのですが、手元にある本から情報を載せておきます。小谷野敦「偉大なる通俗作家としての乱歩」(国文学解釈と鑑賞別冊『江戸川乱歩と大衆の二十世紀』、至文堂、平成16年8月)には、

昭和五年から翌年にかけて『キング』に連載された『黄金仮面』は、その怪盗の正体をアルセーヌ・ルパンにしている。ルブランのルパンものの日本への紹介は、大正元年の三津木春影訳『古城の秘密』に始まるようだが、大正七年には、ルパンもの初期の代表的訳者・保篠籠緒による『怪紳士』が出ている。乱歩は英語ができたがフランス語が読めたとは思えないから、翻訳で読んでいたのだろう。(中略)昭和十一年から登場する怪人二十面相は、明らかにルパンを模したもので、剽窃まがいの場面設定もある(当時としては外国のものを剽窃するのは普通に行われていた)。

と解説されています。法的に解釈すれば、日本は明治32年(1899)にベルヌ条約に加盟しているので、乱歩の当該作は盗作です。日本では死後五十年で著作権が消滅します。フランスは著作権保護期間が七十年です。ルブランが昭和20年(1941)に亡くなっているので、訴えられる可能性があります(著作権違反は親告罪なので著作権管理者が見逃せば助かります)。
 乱歩の『黄金虫』だとか、モンキーパンチの『ルパン三世』が訴えられたらどうなるのか興味はありますが、私はその方には暗いのでわかりません。
 私としては、法には触れるものの、趣向取りを咎めたてないのが作品発表時の慣行であったのならば、許容していいのではないかと思います。江戸時代には、中国小説の翻案小説がたくさんありました。細かい趣向取りは数え切れないほどあります。名作として知られる上田秋成の『雨月物語』もそうです。当時のものごとを、現代の基準で裁断しないというのが文学研究の基本的姿勢だと思っているので、乱歩が盗作したことは確かですが、批難はしません。
 もちろん現代の盗作は許しませんが。

Posted by: Iwademo | September 14, 2005 at 02:18 AM

 コメント&情報有難うございました。私の考えもだいたいIwademoさんと一緒です。乱歩を責めるつもりもないし、怒っているわけでもないのです。

 ただ、ここまで露骨にパクっちゃうと「こんなのありー?」っていう驚きと、笑いがでてきまちゃいます。「特報王国」をパクったタイのテレビ番組を見たときと同じように。まあ、真似されるというのは人気があるという証拠なので、フランスのルパン・ファンも笑って許してくれるんじゃないでしょうかね。フランスでも「ルパン三世」のアニメは人気があるみたいですし・・・

 ‘盗作’というと言葉は悪いですが、出版社も「これはルパンを翻案している」くらいの解説をつけてもいいんじゃないかとも思いました。

 とはいえ、乱歩が日本に探偵小説を紹介した功績は確かに大きいと思います。ルパンのネタを大人じゃなくて子ども向けの本のモチーフにするところなんかセンスがうかがえます。

「少年探偵シリーズ」は学校の図書館でかなり読みましたから、これからルパンを読み進めていくうちに、また盗作、いや翻案を発見するんじゃないかと実は少し楽しみです。 

Posted by: ぴぐもん | September 16, 2005 at 11:57 PM

自分つっこみですが、
× ルブランが昭和20年(1941)に亡くなっているので
○ ルブランが昭和16年(1941)に亡くなっているので

× 乱歩の『黄金虫』だとか
○ 乱歩の『黄金仮面』だとか

でした。親父が昭和16年(1941)生れで、戦争が始まった年と覚えていたんですが、うっかりしました。
『黄金虫』だとエドガー・アラン・ポーになってしまいます。そういえば、乱歩先生、ペンネームからして他人のもじりでした。

翻案だという解説はあると確かにいいです。原作?に興味を持って、読む人も出てくるでしょうし。

ポプラ社の少年探偵団シリーズは楽しみにして、わざわざ県立図書館まで行って借りていたのに、内容はほとんど失念しています。よく覚えていて、ぴぐもんさんはすごいと思いますよ。

もっとも、三年ほど前わさびがたくさん入った寿司を食わせられるという危機を迎えたときに、氷を舐めると味覚がなくなるという「少年探偵ブラウン」(だったと思うのですが)で小学三年生の時に仕入れた知識を思い出し、こっそりサワーの氷を事前に舐めて助かったことがあるので、きっかけがあれば思い出せるのかも知れません。

Posted by: Iwademo | September 17, 2005 at 01:05 AM

 すごくないですよ。つい最近の事はすぐ忘れるのに子どもの頃の事はよく覚えてたりするものですよ。このシリーズは20冊くらいは読んでいるのですが、ほとんど忘れています。最初の一冊って割と印象に残りやすいらしく、この二十面相が明智探偵に成りすまして盗みを働く話と、小林少年が仏像に化けて敢えて盗まれて敵地に乗り込むという、とってもありえない話だけは記憶していました。

 

Posted by: ぴぐもん | September 19, 2005 at 09:58 PM

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